静寂と温もりに包まれた雪深い時を経て、
空一面を覆う大藤棚の花々が春の訪れを告げる。
咲きこぼれる数多のツツジが太陽に輝き、
百畳敷の大広間から望む錦色の紅葉に、
名庭師が残した唯一無二の美が宿る。
八八〇〇坪の敷地は歩くたび、
季節がめぐるたびに表情を変える。
四季をまとう館の完成には八年の歳月がかけられ、
豪壮な建築と、名匠による格式高い佳景とともに、
当時の面影そのままに
越後随一の豪農の物語を今に伝える。
踏みしめた床、見上げた天井、包み込む空気———
そのすべてに歴史が息づく。
ここは稀代の大地主が築きあげた
「日本の美」が満ち、心を豊かに育みます。
八代にわたる伊藤家の遺構である北方文化博物館。
邸内を飾る佳品は、歴代当主のコレクションをはじめ、
戦後の私立博物館第一号となることを契機に
七代・八代当主が高い志を持って蒐集してきたもの。
日本を中心に、中国・韓国の美術品など
資料総数は約六千点にも及び、一部が展示されている。
豪壮堅牢な建築そのものが展示品であり、
京都・銀閣寺ゆかりの名庭師・田中泰阿弥が
五年がかりで完成させた庭園と共に、伊藤家の美学を語る。
本物が伝える、
普遍的な生きるための才気。
日本を知って世界が見える。
歴史と向き合い、未来を描く。
人生の歩みに糧となる時間が、脈々と流れています。